マイクロ法人の住所はどうする?
自宅賃貸・バーチャル・住み替えの3分岐【2026年版】
マイクロ法人とは?
マイクロ法人とは、一般に、経営者一人(またはごく少人数)で運営され、事業の実態が自宅やオンラインで完結する小規模な法人を指す通称で、法令上の用語ではない。個人事業と組み合わせて税や社会保険の負担を設計する文脈で語られることが多いが、その設計の可否や効果は個々の状況によるため、税理士・社会保険労務士への確認が前提となる。会社である以上、設立には本店所在地(登記住所)の決定が必要で、本店所在地は登記事項として登記事項証明書を通じて誰でも確認できる公開情報になる。事業が自宅で完結する場合でも、住所をどこに置くかは、いまの住まいの契約条件と将来の住み替え予定に左右される(2026年7月時点)。
マイクロ法人の住所はどこにすればいいですか?
いまの住まいを起点に「今の賃貸のまま登記」「住まいはそのまま登記住所だけ借りる」「住み替えて登記できる部屋を仕込む」の3分岐で考えるのが早いです。
判断軸は「近いうちに引っ越すか」と「自宅住所を公開してよいか(+貸主の承諾が取れそうか)」の2つです。引っ越し予定があるなら住み替え分岐、引っ越さず公開も承諾も問題なければ今の賃貸で登記、どちらかが引っかかるなら登記住所だけ借りる分岐が有力です。
いま住んでいる賃貸の住所でマイクロ法人を登記できますか?
貸主の承諾が取れれば登記できる場合があります。承諾のない無断登記は契約違反のおそれがあるため、打診と書面化が前提です。
可否は契約書の用途条項・貸主の方針・建物の管理規約・使い方の実態で決まります。来客ゼロ・看板なし・住み方が変わらないマイクロ法人は承諾を得やすい部類ですが、断られたら住所だけ借りる分岐に切り替えるのが現実的です。交渉手順は当サイトの詳細記事で解説しています。
バーチャルオフィスの住所でマイクロ法人を作っても問題ないですか?
来客ゼロ・自宅完結のマイクロ法人とは相性のよい選択肢です。ただし法人口座の開設は金融機関により判断が異なり、許認可業種では使えない場合があります。
物理スペースが不要なマイクロ法人なら「住所だけ借りる」で足りるケースが多く、自宅住所を公開せずに済み、貸主との交渉も不要になります。一方で、実体のある事務所が求められる許認可業種には不向きで、法人口座は金融機関ごとに事業実態の確認方針が異なります。契約前に郵便転送・口座・許認可の3点を確認してください。
引っ越しとマイクロ法人の設立、どちらを先にすべきですか?
住み替えるなら設立前に引っ越すのが基本です。設立直後は入居審査で示せる材料が少なくなりやすく、設立後の引っ越しは本店移転の登記手続きも伴います。
賃貸の入居審査は直近の安定収入や職業の実績を見るため、会社員・個人事業主としての実績があるうちに契約するほうが進めやすくなります。また本店所在地は登記事項のため、登記後に引っ越すと本店移転登記が必要です。設立前に住まいを固めれば、この手続きを最初から避けられます。
結論:マイクロ法人の住所(本店所在地)は、いまの住まいを起点に考えると「①今の賃貸のまま登記する」「②住まいはそのまま、登記住所だけ借りる」「③住み替えて、登記できる部屋を設立前に仕込む」の3分岐に整理できます。事業は自宅で完結し、来客も従業員もいない——というマイクロ法人の典型的な使い方なら、検討すべき選択肢は実質この3つです。本記事は「どの分岐を選ぶか」の判断と、「引っ越すなら設立前・設立後どちらが先か」の時系列判断に絞って解説し、交渉手順・リスク・税務などの個別論点はそれぞれの詳細記事に委ねます。なお、事業拡大を見据えた法人成りで、来客対応や採用のためにオフィスを構える選択肢まで含めて検討したい方は、本記事ではなく個人事業主の法人成りに伴うオフィスと登記のほうが適しています。
マイクロ法人の住所、選択肢は3つしかない
結論:判断軸は「住まいを動かすか」と「住まいと登記住所を同じにするか」の2つだけです。この2軸で整理すると、①今の賃貸のまま登記する(住まいを動かさない×同じにする)、②登記住所だけ借りる(動かさない×分ける)、③住み替えて仕込む(動かす×同じにする)の3分岐に絞られます。まず全体像を押さえて、自分がどの分岐に近いかの当たりを付けてください。
この記事が想定する「マイクロ法人」の前提
マイクロ法人は法令上の用語ではなく、一般に、経営者一人(またはごく少人数)で運営し、事業の実態が自宅やオンラインで完結する小規模法人を指す通称です。税や社会保険の負担を設計する文脈で語られることが多い言葉ですが、その設計の中身(何をどう最適化するか、いくら変わるか)は個々の状況で結論が変わるため、本記事では一切扱いません。税・社会保険の判断は税理士・社会保険労務士に確認してください。本記事が扱うのは、会社を作る以上避けて通れない「本店所在地(登記住所)を、いまの住まいとの関係でどこに置くか」だけです。
想定する読者像は次のとおりです。①会社員またはフリーランスで、法人設立後も作業場所は自宅のまま、②来客・従業員・看板はなし、③いまの住まいは賃貸。この前提から外れる場合——たとえば実体のある事務所が許認可の要件になる業種や、来客・採用を見込む事業——は住所の考え方自体が変わるため、法人登記する住所の選び方から検討し直すのが安全です。
もうひとつ、分岐の前に押さえておきたい確立した事実があります。本店所在地は登記事項であり、登記すると登記事項証明書を通じて誰でも確認できる公開情報になります。つまり「どの住所で登記するか」は「どの住所を公開するか」と同じ意味です。自宅住所を公開してよいかどうかは3分岐すべてに関わる判断材料なので、先に自分の答えを決めておいてください。
3分岐の全体像(比較表)
3つの分岐を「向いている人・費用感の考え方・最初の一歩」で比較すると次のとおりです。費用は物件・サービス・エリアで大きく変わるため、実額ではなく「どういう構造で費用が発生するか」で比べてください。
| 分岐 | 向いている人 | 費用感の考え方 | 最初の一歩 | 詳細記事 |
|---|---|---|---|---|
| ①今の賃貸のまま登記 | いまの部屋に住み続けたい・引っ越し予定なし・自宅住所の公開に抵抗がない | 追加の固定費は発生しない。成立するかは貸主の承諾次第 | 契約書の用途条項を確認し、管理会社経由で貸主に打診 | 登記許可の交渉手順 |
| ②登記住所だけ借りる | 自宅住所を公開したくない・すぐ設立したい・引っ越しの可能性が残る | 住所利用料が月額の固定費として増える(金額はサービスによる) | 登記可の住所貸しサービスを比較し、郵便・口座・許認可を確認 | 登記住所の選び方 |
| ③住み替えて仕込む | もともと引っ越し予定がある・住まいと事業の住所を一本化したい・社宅化も視野 | 引っ越し費用はかかるが、登記承諾・契約名義を最初から設計できる | 登記可物件の探し方を確認し、設立前に住まいを固める | 登記可物件の探し方 |
迷ったら「引っ越し予定」と「住所公開」の2問で決める
どの分岐にするか迷う場合は、次の2問に順番に答えるだけでほぼ決まります。
- 1〜2年以内に引っ越す予定・可能性があるか? あるなら分岐③を軸に検討します。本店所在地は登記事項のため、登記した住所から引っ越して本店を移すには本店移転の登記手続きが必要になります。近い将来の住み替えが見えているのに今の部屋で登記すると、引っ越しのたびに手続きと費用が発生する構図になるため、先に住まいを固めてから設立するほうが手戻りがありません。
- 自宅住所を公開してよいか? 貸主の承諾は取れそうか? 引っ越す予定がなく、公開に抵抗がなく、承諾の見込みもあるなら分岐①。どれか一つでも「ノー」なら分岐②が有力です。承諾が取れるか分からない段階なら、①の打診と②のサービス比較を並行して進め、先に確定したほうを採る進め方でも構いません。
補足として、社宅化の意向が3問目の判断材料になります。法人契約で社宅として借りる設計を視野に入れているなら、いま住んでいる部屋の名義を途中から法人へ切り替えるより、住み替えのタイミングで契約名義ごと設計し直すほうが進めやすいため、分岐③に寄せて検討する価値があります。名義と税務の関係は分岐③の章で触れます。
この2問で決めた分岐が、そのまま以降の読み進め方になります。分岐①なら次章、分岐②ならその次の章、分岐③と「いつ引っ越すか」の時系列判断は後半の2章を読んでください。
分岐①:今の賃貸のまま登記する
結論:追加の固定費が発生しない一方、成立条件は「貸主の承諾を得られるか」の一点に集約されます。承諾なしで登記を進める選択肢はありません。無断での登記は契約違反のおそれがあり、しかも本店所在地は公開情報のため「黙っていれば分からない」という前提自体が成り立たないからです。
可否を左右する4つの要素(要約表)
承諾が得られるかどうかは、おおよそ次の4要素で見立てられます。それぞれの詳しい確認方法・交渉のやり方は詳細記事に委ねます。
| 要素 | 確認すること | 詳しくは |
|---|---|---|
| 契約書の用途条項 | 「住居としてのみ使用する」等の文言の有無と読み方。禁止と書いていない=可、ではない | 賃貸契約書の確認ポイント |
| 貸主・管理会社の方針 | 個別承諾に応じるか。承諾を特約・承諾書など書面に残せるか | 登記許可を取る交渉手順 |
| 建物の管理規約(分譲賃貸) | 貸主本人が同意しても、管理規約で事業利用・登記が制限される場合がある | 同上(打診時に確認) |
| 使い方の実態 | 来客なし・看板なし・居住が主、を具体的に示せるか | 同上(伝え方の文言例) |
マイクロ法人はこの4要素のうち「使い方の実態」で有利な立場にあります。来客ゼロ・看板なし・住み方が一切変わらない、という条件は貸主が最も承諾しやすいパターンだからです。逆に言えば、打診の最初にこの実態を伝えられるかどうかで結果が変わります。「法人登記したい」とだけ伝えると事業所化を警戒されやすいため、「住み方は何も変わらない」をセットで伝えるのが分岐①の要点です。
進め方は「確認→打診→書面化」の3ステップ
手順そのものはシンプルで、①契約書の用途条項を確認する、②管理会社経由で貸主に打診する、③承諾が出たら特約・承諾書・メールなど記録に残る形にする、の3ステップです。打診の切り出し方、そのまま使える文言例、断られた場合の再交渉の仕方は賃貸で登記許可を取る交渉手順にまとまっているため、分岐①で進めると決めたらこの記事を読めば足ります。
時間の見込みも立てておいてください。打診から返答までは貸主・管理会社の動き次第で、すぐ決まることもあれば時間がかかることもあります。設立予定日が近いなら、返答を待つ間に分岐②のサービス比較を並行させ、期日までに承諾が出なければ②で先に設立する、という保険の掛け方が現実的です(その後どうしても自宅で登記したくなったら、承諾を得たうえで本店移転する道も残ります)。
一方、進める前に知っておくべきリスクもあります。自宅住所が公開されることの影響や起こりうるトラブルは自宅住所で法人登記するリスクと賃貸を登記住所にするリスクと回避策に、承諾を取らずに登記した場合に何が起こるかは無断登記のリスクに整理されています。特に無断登記は、発覚した時点で貸主との交渉余地を自分から潰す進め方です。「先に登記して、聞かれたら相談する」だけは選ばないでください。
分岐①をやめて②・③に切り替えるサイン
次のいずれかに当てはまったら、分岐①に固執せず切り替えるほうが早く進みます。マイクロ法人の場合、住所は事業の実態と切り離せるため、①にこだわる理由は本来多くありません。
- 貸主に断られた:条件の出し直しで変わる余地はありますが、平行線なら分岐②へ。承諾のないまま進める道はありません
- 分譲賃貸で管理規約が事業利用・登記を制限している:貸主の一存では決められず、承諾のハードルが一段上がります
- 自宅住所を公開したくない:承諾が取れても、分岐①では住所公開そのものは避けられません。分岐②が素直です
- 近いうちに引っ越す可能性がある:登記後の引っ越しは本店移転の登記手続きを伴います。最初から分岐③または②で考えるほうが手戻りがありません
切り替えは「負け」ではありません。マイクロ法人にとって住所は事業の看板ではなく、登記上の置き場所です。承諾が取れる場所・公開してよい場所に淡々と置くのが合理的で、分岐②に移っても、いまの住まいと働き方は何ひとつ変わりません。
分岐②:住まいはそのまま、登記住所だけ借りる
結論:いまの住まいの契約に一切手を付けずに設立を進められる、マイクロ法人と相性のよい分岐です。バーチャルオフィスなど「住所だけ借りる」サービスで本店所在地を確保すれば、貸主との交渉も自宅住所の公開も不要になります。ただし「登記だけ」の利用が万能というわけではないため、契約前の確認点を押さえてください。
「登記だけ」利用がマイクロ法人と相性がいい理由
マイクロ法人の典型(作業は自宅・来客ゼロ・従業員ゼロ)では、登記住所に物理的なスペースは必要ありません。住所利用料という固定費が増える構造になりますが、引き換えに得られるものが3つあります。①本店所在地として公開されるのは借りた住所であり、自宅住所を出さずに済む。②いまの賃貸の貸主に承諾を求める必要がなく、交渉の成否や返答待ちに設立スケジュールが左右されない。③住まいの移動と本店所在地が切り離されるため、将来引っ越しても本店移転の手続きが発生しない——という点です。特に③は見落とされがちですが、賃貸住まいで住み替えの可能性が残る人にとって、住所を固定できる効果は大きい要素です。
なお、分岐②を選んでも自宅で作業する日常は変わりません。登記をせず、来客も看板もない在宅ワークであれば、通常の住居利用の範囲に収まるのが一般的な考え方です。「自宅で仕事をすること」自体に契約上の不安があるなら、用途条項の読み方を賃貸契約書の確認ポイントで確認しておくと安心して進められます。
向き不向きの整理
分岐②が合うかどうかは、事業の中身と生活動線で決まります。次の整理で自分がどちら側かを確認してください。
| 向いている | 向きにくい |
|---|---|
| 自宅住所を公開したくない | 許認可の要件で実体のある事務所が求められる業種(該当有無は所管窓口で確認) |
| 設立を急いでいて、貸主交渉の結果を待てない | 登記住所宛ての郵便物をすぐ手元に置きたい(転送のタイムラグを許容できない) |
| 近い将来の引っ越し・住み替えの可能性が残る | 取引先の対面来訪が定期的にある(会議室等の実スペースが要る) |
| 分岐①で貸主に断られた・管理規約で制限されていた | 住まい側でも事業スペースの拡張(作業部屋の確保等)を同時に考えたい |
契約前に確認すること(郵便・口座・許認可)
サービスを比較する段階では、料金より先に次の3点を確認してください。
- 郵便物の扱い:登記住所には税務署・年金事務所・取引先などからの郵便が届きます。転送の頻度・方法・通知の仕組みが自分の事務処理のリズムに合うかを確認します
- 法人口座の開設:住所貸しの住所での口座開設可否は金融機関により判断が異なります。一般論として、事業内容や実態を示す資料を整えて臨む準備が要る、という以上の断定はできません。開設予定の金融機関の案内を先に確認しておくのが確実です
- 許認可の実体要件:実体のある事務所が要件になる業種では、住所貸しでは要件を満たせない場合があります。該当しそうなら契約前に所管の窓口で確認してください
バーチャルオフィス・レンタルオフィス・コワーキングといった住所の種類ごとの詳しい比較と選び方は東京で法人登記する住所の選び方に委ねます。シェアオフィスやコワーキングでの登記を検討する場合はシェアオフィス登記の可否と注意点を、将来事業が育って実オフィスの賃貸へ移る段階になったらバーチャルオフィスから賃貸への移転を参照してください。
分岐③:住み替えるなら設立前に仕込む
結論:もともと引っ越しを考えているなら、「登記できる部屋」への住み替えを済ませてから会社を作るのが最も設計の自由度が高い分岐です。住まいと事業の住所を一本化でき、登記の承諾・契約名義・社宅化の可能性まで最初から織り込めます。そのぶん、順序を間違えると審査・承諾・税務のすべてで手戻りが出るため、段取りがこの分岐の肝です。
基本の段取り:物件確定→承諾の書面化→設立
分岐③の進行は次の順が基本です。
- 登記可の物件を探す:「登記可」と明記された募集は少なく、候補を広めに出して不動産会社経由で貸主の承諾可否を確認する流れになります。検索条件の作り方・仲介への聞き方の文言例は法人登記可の賃貸物件の探し方に委ねます
- 登記の承諾を書面化して契約:特約または承諾書で「本店所在地としての登記を認める」旨を残します。用途条項との整合の見方は賃貸契約書の確認ポイントを参照してください
- 入居して生活を移す:住民票の異動など、生活側の手続きを済ませます
- その住所を本店所在地として設立登記:住所が確定しているので、定款作成から登記申請まで迷いなく進められます
- 社宅化・按分などの税務設計:契約形態と使い方で結論が変わる領域のため、法人と賃貸の税務を入口に、具体の判断は税理士に確認してください
要点は、登記の承諾を「入居後」ではなく「契約前」に確定させることです。入居してから打診する形になると、断られた場合に分岐①と同じ袋小路に入ります。せっかく住み替えるのに承諾を後回しにする理由はありません。
もうひとつの失敗例が「設立日を先に固定してしまう」ことです。会社の設立日から逆算して物件探しを始めると、貸主への承諾確認や入居審査に時間がかかった場合に、妥協した物件で契約するか設立日をずらすかの二択を迫られます。分岐③では、住まいの確定を起点に設立日を置く——つまり住所が決まってから定款・登記の日程を組む順序にしてください。
物件探しの段階で伝えること
仲介への一次問い合わせの時点で「本店所在地として法人登記したい。実態は居住が中心で、来客・従業員・看板はない」と明示してください。マイクロ法人は貸主にとって「住み方が変わらない入居者」なので、この一言があるだけで貸主確認がスムーズになります。条件を後出しにすると、内見・申込まで進んでから探し直しになりがちです。問い合わせ文言の実例、SOHO可・事務所可表記との関係、承諾を得やすい物件の見立て方は、すべて登記可物件の探し方で解説しています。
社宅化を視野に入れるなら契約名義を先に設計する
分岐③でよく出てくるのが「法人契約にして社宅として借りる」プランです。ここで押さえるべきは順序だけです。個人契約のままか法人契約にするかで家賃の取り扱いなど税務の結論が変わり、契約名義を後から変えるのは貸主の再審査を伴う手間の大きい変更になります。社宅化を考えるなら、物件の契約前に税理士へ相談して名義の方針を決めておいてください。損金算入・按分・社宅の要件といった税務の中身は本記事では扱いません。法人契約と賃貸の税務と税理士への確認に委ねます。なお、設立前で法人名義がまだ使えない場合は「個人名義で契約し、設立後の名義変更や社宅化の可否を貸主に事前確認しておく」という進め方もあります。この点も契約前に仲介経由で確認しておくと安全です。
設立前 vs 設立後、引っ越すならどっちが先か
結論:迷ったら「設立前(いまの職業のうち)に引っ越す」が基本です。理由は入居審査にあります。賃貸の審査は直近の安定収入や職業の実績を見るため、設立直後の代表者は提示できる審査材料が少なくなりやすく、同じ人でも「会社員・個人事業主として借りる」ほうが進めやすいからです。加えて、設立後の引っ越しには本店移転の登記手続きが伴います。
時系列判断表:設立前に引っ越す場合/設立後に引っ越す場合
2つのルートを、審査・名義・手間の3観点で比べると次のとおりです。
| 比較項目 | 設立前に引っ越す | 設立後に引っ越す |
|---|---|---|
| 入居審査の材料 | 会社員・個人事業主としての現在の収入・実績で審査を受けられる | 設立直後は決算や事業実績がまだなく、審査材料が少なくなりやすい |
| 契約名義 | 個人名義が基本でシンプル。社宅化を見据えるなら名義方針だけ税理士と先に決める | 代表者個人名義か法人名義かの選択が発生。法人名義は個人とは別の審査になる |
| 登記まわりの手間 | 入居後にその住所で設立登記すれば、本店は最初から新住所で確定 | 登記済みの本店所在地からの移転となり、本店移転の登記手続きが必要 |
| 段取りの自由度 | 登記承諾・特約・名義を新居の契約時にまとめて設計できる | 新居側の登記承諾の取得と本店移転を並行して進める必要がある |
設立前に引っ越すのが基本になりやすい理由
第一の理由は審査です。入居審査は「いま安定した収入があるか」を直近の材料で見ます。会社員なら在職中の収入証明で、フリーランスなら確定申告の実績で審査を受けられますが、法人を設立した直後の代表者は、会社としての決算も事業の実績もまだ示せません。設立直後の経営者がどう見られ、何を準備すれば通しやすくなるかは経営者・代表取締役の賃貸入居審査で詳しく解説しています。また、会社員を辞めてフリーランスとして部屋を探す局面が絡む場合はフリーランスの賃貸審査が参考になります。
第二の理由は登記の手間です。本店所在地は登記事項なので、設立後に住まいごと本店を移すなら本店移転の登記手続きが必要になり、費用も発生します(金額は移転先の管轄などで変わるため法務局の案内で確認してください)。設立前に住まいを固めてしまえば、本店は最初から新住所で確定し、この手続き自体が発生しません。「審査は通りやすいタイミングで、登記は動かない住所で」——この2つを同時に満たすのが「設立前に引っ越す」順序です。
設立後に引っ越す場合の備え
事業の都合などでやむを得ず設立後の引っ越しになる場合は、次の3点を先回りして準備してください。
- 代表者個人として審査を受けるなら:審査材料の作り方・見られ方を経営者の賃貸審査で確認し、収入や事業を示せる資料を先に揃えます
- 法人名義で借りるなら:審査の見られ方は法人契約の審査、揃える書類は法人契約の必要書類、申込みから入居までの段取りは法人契約の流れに分けて解説しています。設立直後の法人は書類面で示せるものが限られるため、早めの確認が効きます
- 新居で登記し直す(本店移転する)なら:新居側でも登記の承諾が必要になる点は分岐①・③と同じです。物件探しの段階から登記目的を明示してください
よくある時系列の失敗パターンと回避策
この章の判断を実行に移す際、実務でつまずきやすいのは次の3パターンです。いずれも「順序を1つ入れ替える」だけで避けられます。
- 退職→設立→引っ越しの順にしてしまう:会社員としての審査材料が使えるのは在職中だけです。独立と住み替えを両方予定しているなら、退職・設立より先に住まいを固める順序に組み替えてください。すでに退職後なら、フリーランスの賃貸審査で審査材料の作り方から確認します
- いまの賃貸の更新時期と設立時期が重なる:更新のタイミングで住み替えるつもりなら、その部屋で登記してしまうと退去と本店移転が同時に発生します。更新月が近い人は、更新して住み続けるか・更新を機に分岐③へ進むかを、設立日を決める前に確定させてください
- 郵便の受け取り体制を決めずに設立する:設立直後は税務署・年金事務所・金融機関などからの書類のやり取りが続きます。本店所在地をどこに置くにせよ、「そこに届いた郵便をいつ・どう受け取るか」の動線を設立前に決めておくと、初期の手続きが滞りません
なお、設立登記そのものに必要な書類の全体像は法人登記の必要書類で確認できます。住まいの段取りと設立手続きを同じスケジュール表に載せて管理すると、どちらかの遅れがもう片方を巻き込む事故を防げます。
まとめ:住まいを起点に分岐を選び、引っ越すなら設立前に
結論:マイクロ法人の住所選びは、住所サービスのカタログ比較から入るのではなく、いまの住まいを起点にした3分岐で考えるのが最短です。最後に判断の要点をまとめます。
- 選択肢は「①今の賃貸で登記」「②住所だけ借りる」「③住み替えて仕込む」の3つ。判断は「近く引っ越すか」「自宅住所を公開できて承諾が取れそうか」の2問で決まる
- どの分岐でも無断登記だけはしない。本店所在地は登記事項として公開され、承諾のない登記は契約違反のおそれがある
- 分岐①は交渉、②はサービス選び、③は物件探しが本丸。それぞれの実務は本文中の詳細記事に進む
- 住み替えるなら設立前に引っ越すのが基本。設立直後は審査材料が少なくなりやすく、設立後の住み替えは本店移転の登記手続きも伴う
- 社宅・損金算入・社会保険といったお金の設計は税理士・社会保険労務士に確認する。本記事は住所と住まいの順序判断までを担当する
よくある質問
まとめ記事で全体像をチェック
具体的に動き始めるならLINEへ
LINEに以下4項目を送るだけで、1〜2営業日以内に 物件候補と初期費用の概算 をお返しします。
- ① 希望エリア/勤務先・学校の最寄り駅
- ② 家賃予算(月額)
- ③ 間取り(ワンルーム / 1K / 1LDK 等)
- ④ 引越し予定時期(未定でもOK)